セカンドライフの住宅計画
桐生 悠一 エグゼクティブサマリー (1)高齢者には都心のマンションの方が暮らし易い。 (2)生活動線を便利に短く。(寝室、バスルーム、トイレの接近等) (3)僅かな高低差での躓きが一番危ない。段差をつけるならある程度大きくつけよ。 (4)高齢者の住宅は暖房完備でなければならない。 (5)二世帯住宅は家屋の構造が人間関係を左右する。 (6)リフォーム業者の餌食になるな。サポートしてくれる人や団体がある。 (7)一生自宅で暮らすことは後期高齢期には難しくなる。 1.ライフスタイルに合わせた住まいの変遷 日本の持ち家率は60%だが、オーストラリアの持ち家率はこれを上回る70%である。ここでは「人は一生に5回家を買い替える」といわれる。@独身時代に車より先に安い新築の小さい家を買う。そこに花嫁を迎え、A子供が増えたら郊外に広い土地付の一戸建てを買う。ペンキ塗りやガーデニングに勤しみ、生活に便利なように改造し、B次にプール付きのビッグな家に買い換える。この時、購入時よりどれだけ高く売ったかが自慢の種にもなるのだ。C生活にゆとりができる熟年になればビクトリア調の内装の家とか建築後100年といった伝統ある家に移り、夫婦で磨きを掛ける。D高齢になると大きな家を売って少々高価でも都心の便利な場所に小さな家を買う。ここで夫婦で老後を楽しむのである。こうして60歳以上の94%が自分の家に住んでいる。やがて、どちらかに先立たれ、一人住まいが多くなる。70歳代の女性を見ると自分の家に住んでいる人は42%に減り、80歳代だと28%に減っている。ナーシングホームやホステルといった施設に入る人が増えるのだ。(「すまいる」1999/12創刊号) ここに紹介されたオーストラリアの人たちは、全く理想の形でその時々のライフスタイルに合わせて住宅を買い替えている。羨ましくて溜息が出そうだが、日本でこれを実行するのは至難の業である。何故なら、日本は住宅の建設費が世界標準からかけ離れて高く、また、築20年を超えていれば事実上家屋価格がゼロ査定されるため、買い替え時の金銭的負担が極めて大きいからである。買った時よりも売る時に高く売れるなど殆どあり得ない。 なお、参考までに関連データを挙げると、東京圏の一戸建て住宅の平均価格は一世帯当りの平均年収の6倍を超え、ニューヨーク圏、ロスアンゼルス圏の3.3倍を大きく上回っているが、後者の敷地面積は前者の2倍以上ある。また、購買力平価で比較すると、米国の住宅資産に対して日本のそれは80年末で45%、85年末で48%、89年末で50%と実質的価値の格差は開いたまま改善されていない。日本では古い建物ほど建築業者が設計図面などを紛失して品質を評価することが難しく、不動産の個別取引の価格情報が公開されていない。このため、日本の中古住宅の市場規模は2002年で米国の30分の1しかない。 日本の住宅の平均寿命は26年、米国は44年、英国は75年であり、住宅でも「日本の常識は世界の非常識」となっている。日本人の新しいもの好きは世界に冠たるもので、自動車の買い替え期間もこれまた世界一短い。米国では常識の引越し時のガレージセールも、新品大好きの日本人には当面は普及しそうもない。但し、最近この風潮に変化が見られる。住宅メーカーが「50年点検システム」を実施する、或いは100年以上の耐用性を謳う等、住宅業界は長寿命化競争の様相さえ呈している。希望が持てる新しい波である。 さて、セカンドライフの住宅計画はとなると、前述パターンの五番目の「都心の便利な場所の小さな家」であろう。東京都で都心に小さな家となれば、マンションになる。都心のマンションには高齢者に向いた多くの利点がある。@狭いが高齢者には充分である、A生活動線が短いので身体的負担が小さい、Bもう庭仕事をやる歳ではなかろう、C戸締りが簡単、D光熱費が少なくて済む、E病院、デパート、文化施設等に近い、F交通の便が良く、子や孫たちが訪問してくれるチャンスが多くなる、等である。 小金井では「都心の便利な場所」とは言い難いが、この地区で最善を尽くす場合について考えるとしよう。 厚労省は60〜70歳を前期高齢者、70歳以上を後期高齢者と分類しているが、ここでいうセカンドライフは60 〜75歳辺りを対象としている。この期間のために住み替える、新築する、改築するなら、有効在住期間ができるだけ長くなるように、できるだけ前の時期に実行してしまうのが望ましい。 この時期に新築、改造するなら、バリアフリー住宅であり、或いは二世帯住宅であろう。まず、それらについて触れてみたい。 2.バリアフリー住宅 人間は加齢による身体的能力の低下から逃れることができない。加齢による一般的な身体的能力低下とは次のような事柄である。 (1)脚の力が衰える。⇒ 摺り足になる。少しの段差に蹴躓きやすい。倒れかかっても踏ん張れない。 (2)腰の力が衰える。⇒ 中腰姿勢の維持、立ち上がり動作が辛くなる。腕によるアシストが必要になる。 (3)視力が衰える。⇒ 危険な対象を発見し辛い。黄色と白色の区別が難しくなる。 (4)平衡感覚が低下する。⇒ 転倒の危険性が高くなる。 (5)握力が衰える。⇒ ドアのノブ等を廻し辛くなる。 (6)車椅子が必要になることがある。 バリアフリー(障害物がない)とは、上記のような身体的能力が低下した高齢者に対して使い易い配慮がなされていることを指す。バリアフリー住宅というと、一般には次のような仕様が満足されている。 (1)生活動線が短かくて便利なレイアウトを選ぶ。夜間の生活動線は寝室・バスルーム・トイレの関係である。昼間の生活動線はキッチン・食堂・リビングルームや趣味の部屋・トイレの関係である。 (2)同じ階の床面の段差を極力無くす(3mm以内)。絨毯、敷物等の縁も危険。 (3)段差が必要なら10数cm以上と大きく取り、段差があることを認識させる。 (4)玄関での靴の着脱で座れるような簡単な腰掛を設ける。 (5)バスタブの縁に安全に出入り動作ができるように腰掛要素を設ける。 (6)玄関、風呂場等に腕によるアシストのための手摺を設ける。 (7)ドアのノブは握り方式でなく、バー方式にする。 (8)できるだけ開き戸ではなく、引き戸にする。 (9)部屋の縁、端や手摺、器具等で色彩コントラストを強調して物体を認識し易いような色彩計画を行う。 (10) 廊下、トイレ等の巾、奥行き等を車椅子の移動、取り廻しが可能な寸法にする。 最近建築されている大手メーカーのマンションや戸建て住宅は基本的にはバリアフリー仕様である。勿論、バリアフリーといつても程度に軽重があり、普通の高齢者用か、車椅子生活者対応かで当然仕様の違いがある。天井にレールを配し、人物を吊上げて入浴させることができる仕様も特別注文で多くの業者が対応している。 また、レイアウト(間取り設計)は相当の自由度が許されているので、生活動線の合理化を優先して設計し、快適な住まいづくりを成功させてほしい。生活動線とはあるレイアウトにおける生活者の移動軌跡のことであり、その合理化とは移動距離の短縮化を指す。生活の質とのバランスを考慮しての上だが、生活動線が短縮化されると高齢者にとって身体的負荷が低減するし、空調スペースも減少して良質の空調環境が得られ易い。 例えば夜間の生活動線を短縮するには寝室、脱衣洗面室、バスルーム、トイレを極力接近してレイアウトする。 こうすれば暖房を行き渡らせることが容易になり、歩く距離も短くなり、格段に快適な生活環境を得ることができる。あるアンケート調査によれば、高齢者にとっては段差より温度差がバリヤーだとの結果が出ている。 なお、バリアフリーとは違うが、住宅に関しては収納率(床総面積に対する収納面積比)の不満が非常に多い。 一般的な収納率は一戸建てで10〜15%、マンションで6%程度である。昔の日本家屋は20%の収納率を確保した。このスペースをはみ出す物は整理すべきなのであろう。最近、収納率30%の住宅が出て人気を博している。 東京都は「東京都における加齢対応型住宅の建設指針及び同設計マニュアル」「加齢対応型住宅ガイドブック」を都庁等で販売しており、「この指針は、来るべき高齢社会において、高齢者が住み慣れた地域で自立した生活を続けられるように、加齢に伴う身体機能の低下に対応できる良質な住宅ストックの形成を図るため、住 宅部位毎に備えるべき特性を定める」と謳っている。詳細は現物を見ていただきたいが、説明文とイラストの組合せで大変判り易い構成になっている。次頁に参考として前者から玄関とトイレ等に関したイラストを転載する。 東京都は2001年から「高齢者向け優良賃貸住宅」(高優賃住宅)制度を施行している。住戸の専有面積が25 u以上で床や手摺の設置などバリアフリー化、緊急時に対応できるサービスがあることなどを認定基準として、国や自治体が建築費用などを助成する。入居者は60歳以上で、収入に応じて家賃の一部の助成もある。清瀬市にある賃貸住宅「こもれび清瀬」などがその実例である。2002年末時点で全国に約1万2千戸が既に認定されている。 本年4月からの改定ハートビル法施行に合わせ、国土交通省は学校、ホテル、公衆トイレ等に至るまでバリ アフリーの建物を設計する際のガイドラインを8年ぶりに改定した。「日本でもバリアフリーの建物が増えて現場の経験が蓄積された結果、内容は旧版と比べものにならないほど充実した」とは住宅局の担当者の言である。公共施設、民間施設を問わず、新築・改修時の設計上のポイントを挙げ、「通路」「エレベータ」「浴室」など部分毎に望ましい設備の寸法や位置を解説している。トイレの場合「個室の広さは車椅子が回転できる2m四方 が望ましい」「便器洗浄ボタンは座ったままでも操作し易く」「緊急通報ボタンは手摺に掴ったとき触れてしまわない位置にする」といったようである。なお、1994年制定のハートビル法はデパート、ホテル等のバリアフ リー化の努力義務を課したものであったが、今般、学校、事務所等を追加・充実した。 最期に、バリアフリー化の限界について考えよう。80歳代前半で車椅子の世話になる人は10%以下である。 入浴のために天井にモノレールを設置せねばならないような人は更に少ない。現にその状態ならそのような仕様の住宅を建てるのは判るが、将来の可能性に備えて過剰なバリアフリー化を今実行するのは深読みのし過ぎである。大抵、予想外の成り行きとなって過剰仕様は無駄になる。常識的なところで止めておきたい。 老後に備えて家中に手摺を設けたが、実際その時が来たら手摺の高さ等が本人に合わず、全部付け直しになった実例が身近にある。歩けなくなった父親のために改築したが、痴呆が進んだら全く役立たなくなった、部屋の出入り口を開き戸から引き戸にしたら滑りが良すぎて転倒事故を起こした等、いろんな事例が転がっている。「過ぎたるは及ばざるが如し」か。 車椅子や天井から吊下げが必要になったら、家族の努力では長期に亙っての介護はできないので、老人ホームに入って、専門家の介護に身を委ねるのが自然の流れであろうと考える。松下幸之助氏でも晩年は自宅から出て病院で介護を受けて生活しており、そこを本拠にして重要な会合等に出席している。「セカンドライフの住宅計画」は「サードライフ研究」と密接な関係を持つのであり、これらを一繋がりの事項として考える視点が必要でなかろうか。 3.二世帯住宅 二世帯住宅への建て替えを提案された親世帯は、子供と同居できる安心感、孫と同じ屋根の下で暮らせる幸せなど楽しい夢がどんどん膨らんでいく。ところが子供の方は意外と打算的である。まず、土地購入の負担がなく、マイホームの経済的負担が軽い。夫人は働きに出たいと考えていたが、子供が小さいので不安だったが、両親に預けられれば安心。かねて夫婦で海外旅行をするのが夢だったが、子供を置いてとなると踏み切れなかったが、両親がいてくれればこれも安心して実行できる。こんな物理的な利点ばかりを考えるのが若夫婦だ。両サイドで始めから二世帯住宅にかける夢の内容が食い違っている。このため、同居を始めてから「こんなつもりじゃなかった」と不満が出たり、トラブルになったり、どちらかが賃貸住宅に移ったり、若夫婦が離婚する最悪の事態すら起こっている。お互いに独自の生活スタイルや習慣を形成してきた二つの家族が同居することに無理がある。(2003/1/1日本経済新聞) このテーマは非常に重く難しいテーマある。嫁が姑に我慢したのは遠い過去の時代の話と思わねばならな い。私の知り合いで、傍目に理想的と思われた夫婦が、母親と二世帯住宅で生活を始めて2年目に離婚して夫人は子供二人を連れて実家に帰ってしまった。経験的には娘と母親の二世帯はうまく行っているようだ。二世帯住宅を成功させるには、二つの世帯を独立型の間取りにすべきである。玄関、勝手口を始めとするあらゆ る住居施設を分離独立させることである。妥協的な提案をする専門家もいるが、賛成できない。 (1)垂直分離型:一般に1階に両親、2階以上に子世帯となる。上の生活音や孫のどんどんが下に伝わらないように24pの床スラブ、或いはフローティング床構造を勧める。 (2)水平分離型:界壁を厚く、遮音構造とする。 日常は赤の他人の如く過し、たまに親子孫の関係を楽しむのが成功の秘訣である。親は子の近くにいる安心感、子は親から時には孫の面倒を見てもらえる二世帯住宅ならではのメリットを享受できる。 4.集合住宅(マンションを除く) (1)グループホーム:スェーデン、デンマークなどの北欧が発祥地である小規模な介護施設である。同程度の痴呆や障害のある人々が一つのグループとなって一つのホームを共有し、介護を受けながらできるだけ自立して暮らそうとするものである。介護保険で「痴呆対応型共同生活介護」として保険給付の対象になっている。介護保険では有料老人ホームに必要な入居者数が10人以上となっているのに対して、グループホームは9人以下となっており、職員には有資格義務がない。サンフォーレが開設した「リーラの家 辻堂」の例では、私邸を改造して7人の高齢者が住んでいる。暗証番号が要る玄関自動ドア、介護浴槽、エレベータ、各室の洗面・トイレ、マントルピースとシャンデリアがある広いダイニング・リビングルーム等を備えている。 (2)シルバーハウジング:昭和60年に厚生省と建設省がまとめた「シルバーハウジング構想」が基本となった公的な高齢者住宅で、東京都は「シルバーピア」という名称で導入している。特長はライフサポートアドバイザーを常駐させており、入居者に対する生活指導、安否確認、一時的家事援助、緊急時の対応、関係機関との連絡を行うものである。 (3)有料老人ホーム:「サードライフ研究」で詳しく説明する。 5.上手な暖房の勧め 近年の高齢者の長寿命化は食生活の改善と空調の普及によりもたらされたが、中でも大きく寄与したのは 空調環境の質的向上であるといわれている。人間にとって最適な室温は24℃である。新聞で老人の死亡通知 を最も多く目にするのが特に寒い時期であることは明白な事実である。 1〜2月にかけて屋内の各所に温度 差が大きな場所が発生し易く、これらの場所を移動する際に曝される ヒートショックが高齢者にとって最も厳しい試練となる。 寒い風呂場、寒いトイレ、寒い廊下等が問題である。場所間の温度差、天井部分と床部分との温度差をなくし ていかねばならない。ホテルや病院や老人ホームやマンション等の大規模居住設備はある程度これらの恒温化を実現している。 それは建物の熱量を保持する容積の割に熱を放散する表面積が小さく、躯体の熱容量が大きいため、場所・高さによる温度差が極小化されているためである。 容積に対する表面積が大きく、1階の床下が外気に通じている一戸建ての住宅ではこれらの恒温化は技術 的に結構難問である。換気口を閉鎖して床下を閉鎖空間にせよとの記事を見るが、高湿度の日本では床下建材の腐敗を招くとんでもない提案である。 冷房についてはエアコンが定番となっており、選択肢が殆どない。以下には一般的な一戸建て住宅で実行できる上手な暖房環境の実施方法を紹介しよう。 (1)蓄熱暖房機 ⇒ 遠赤外線による穏やか暖房、静粛、暖房費安い 数多ある暖房方式の内、一戸建て住宅に最適な暖房方式として推奨したい。 聞き慣れない暖房機なので、簡単に説明する。安価な深夜電力を使い蓄熱煉瓦を設定温度まで加熱し、昼間に自然放熱する構成である。 設定温度は調整できるので、厳寒期には設定温度を高めに、寒気が弛む頃は低めに調節する。蓄熱終了時から次の蓄熱開始時まで自然放熱 して指数関数的に温度が低下して行く。一番寒気が厳しい明け方が最高温度になっているし、夜は不足すれば他の暖房を少し追加すれば よいので、気にならない。北欧諸国では家中に分散設置する定番の暖房設備である。 私は自宅で3基使用して、夜間の行動空間となる寝室、
リビングルーム、トイレ、洗面脱衣室、風呂場の5室をほぼ完璧に恒温化している。トイレ、洗面脱衣室、風呂場は暖房期間はドアを開放して
首振り扇風機により常時送風し、洗面脱衣室に設置した蓄熱暖房機の熱を3室に行き渡らせている。 タイル貼りであるこれらの部屋の壁面・床面が手で触ってほのかに暖かい。本年3月の深夜電力料金は1,299KWh に対して9,734円であったから7.3円/KWhである。それ以外の電力料金(従量電灯B)は472KWhに対し14,374円で24.1円/KWhになる。 この場合、深夜電力の単価は普通電力の3分の1以下である。英国Creda社の製品であり、2.4 KW級の機種で約12万円、10畳の部屋を楽に暖房できる。国内各社からも数機種発売されているが、ファン付きは高価なだけでなく不要である。この方式の長所は、@放熱のかなりの部分が遠赤外線によるため身体に穏やかに浸透し、室内の温度分布も均質になる、 Aファンが無いので無音、である。短所を挙げると、@春先など気温変化の激しい時期は翌日の気温を予想しながら設定温度を調整する煩わしさがある、 A日中気温が上昇すると室温が高めになり過ぎる場合がある、B本体重量が重い161Kg、等がある。
(2)ヒートポンプ空調 ⇒ 最も省エネ・経済的、上下温度差出やすい、多少騒音がある インバータ・エアコンを前提に説明する。最近のエアコンはCOP(成績係数)が5以上の高効率機種が多い。冷房或いは暖房時に1KWの電力を投入すれば5KW分の熱量を移動させるのである。発電所で使用した熱エネルギーの約44%が電力として家庭に届けられている。これがエアコンによって5倍の熱エネルギーに変換されるので、全体として発電所の熱エネルギー1に対して2.2倍になっている。前述の蓄熱式を含めて電熱方式の暖房機は0.44倍にしかならない。深夜電力料金が3分の1でも効率が5倍のエアコンには敵わない。 問題点を挙げれば、@空気を加熱する方式なので極寒時に加熱された空気は天井付近に漂い、床面付近は寒く、上下方向の温度差が大きくなり易い、Aファンがあるので静粛とはいかない、等である。@はサーキュレータを使用すれば解消するが、ファン騒音が一層大きくなる。 (3)ガスまたは石油暖房 ⇒ 上下温度差出やすい、騒音がある インバータ・エアコンは温度調節は連続制御方式であるが、この種の暖房機はオンオフ制御方式であるため、@室温が絶えず変動する、A空気加熱なので上下温度差が出やすい、等問題点が多い。 (4)セントラル空調 ⇒ 全館恒温可、静粛、運転費が高い、ダクトの経年汚染が問題 設計が良い場合は、出来立ては最高に快適である。但し、全館冷暖房は昼間の生活空間と夜間の生活空間を常時全部空調するため、運転費用が他のどの方式より多分3倍以上高額になる。省エネに関心が高くなって、集中空調から分散空調へと流れは変わった。 もう一つ、年月と共にエアダクト内に埃が集積し、そこにカビが発生して胞子が全館にばら撒かれ、衛生上とんでもない状態になったりする。なお、この種のエアダクトの完全清掃は不可能である。 (5)建物各部の断熱性能向上 建物の気密性が低いと暖かい空気が対流によりどんどん逃げて行くし、断熱性が悪いと壁面、ガラス窓等から熱エネルギーが輻射・伝導により逸散し、暖房の効率が悪くなる。最近の建物は気密性・断熱性が非常に向上し、暖房効果も良くなっている。このため、以前であれば室内空気が自然に入れ替わっていたのが、1時 間に0.2回程度しか自然換気しない例もある。酸欠で室内の人間が窒息しないように、新しい建築基準では1時間当り2回の強制換気を義務づけている。酸素を補給するエアコンが現れる時代である。 建物の躯体についても外断熱方式に関心が高まっている。この方式は鉄筋コンクリートの躯体には効果がある。しかし、木造建築では期待したほどの効果は出ない。 以前の建物でも断熱性能を向上することができる。@天井裏に断熱マットを敷き詰める、A床下に発泡ウレタン断熱材を貼り付ける、Bガラスに段プラを貼り付ける、C動かさない戸や窓はアルミ箔テープ等でシールするなどで見違えるほど断熱性能が向上する。やって見る価値がある。 6.安心できる建築業者選び 91年度には166万戸あった新設住宅着工件数が最近では120万戸台に下がり、建築業者にとって厳しい時代が続いている。長引く景気低迷からリフォーム需要が多くなり、そこに焦点を合わせた販売活動が増加している。この事情を反映して訪問販売でリフォーム工事を請負う業者(訪販リフォーム業者)と高齢の消費者の間のトラブルが増えている。 新聞に載っていた実例を紹介しよう。Aさん宅にある日、「無料で耐震診断をする」と訪販リフォーム業者が訪ねてきた。業者は屋根の様子をビデオに撮り、「危ない。今なら360万円のところを210万円で工事できる」と改修工事の契約を迫った。Aさんが「お金がない」とやんわり断ると、ローンを提案。結局、断りきれずに契約し、信販会社と10年間で返済総額300万円のローン契約を交わす羽目に。工事内容もずさんで、Aさんの娘が異変に気付き、国民生活センターに相談した。同センターが調査したら、同種の工事の相場は約100万円。工事前の屋根の状態は、直ちに改修が必要とは必ずしも言えない状態と推測された。解約を助言したものの、業者は譲らず、結局Aさんが95万円を支払うことで交渉が決着した。 各地の消費生活センターに寄せられる訪販リフォーム工事に関する相談件数は、2001年度は7,000件を突破。住宅改修工事に関する相談全体の77%を占めている。国民生活センターの分析によると、当事者の52%が60歳以上。1件当りの契約金額が216万円と高額だ。「工事予定日になっても着工しない、いつまでたっても遣り残した工事を始めない」など契約の不履行や、「断ったのに帰らない」といった強引な勧誘、「点検を装って来訪し、勧誘された」という点検商法に関する苦情が目立つ。高齢者しか住んでいない築20年から30年の戸建て住宅に当りをつけ、言葉巧みに改修工事を勧める。社会との交流が少ない高齢者は、行政などが発する悪質情報が入り難いという弱点を突くという。専門家らは「訪販リフォームはトラブルが多いので、できれば利用しない。利用する意向の場合でも、その場での契約は避けるべきだ」という。 (財)住宅リフォーム・紛争処理支援センターはホームページに一定基準を満たす全国3,400の業者名を載せている。そうした情報サービスを利用するなど、信頼できる業者を捜す努力が必要だ。 T弁護士は「契約する際には、細かい内訳を書いた見積書と修理箇所を示した図面を必ずもらう」よう助言する。一級建築士のF氏は「見積りは2ヵ所以上から取り、専門家に見せて相談する」ことを勧める。契約後におかしいと感じたら、クーリングオフ制度での解約が可能だ。8日間以内なら無条件解約でき、原状回復も要求できる。それに気が付かなかった場合も、とにかく国民生活センター等に速やかに相談したい。(2003/4/21日本経済新聞) 7.近隣の信頼できる相談相手 コンセリア(三鷹市下連雀3-32-3三鷹産業プラザ・アネックスG0、TEL.0422-72-5740) 丸山俊江さんが経営する住まいのコーディネータ事業である。普通の人はリフォームで経験を積むのはまず 不可能なので、ちょっとした欠陥や工事の不備には目が届かない。丸山さんがコンセリアを立上げたのは、そういう人 たちの身になって住まいづくりの手助けをしたいと思ったからだという。8年前に国分寺市の土地を購入したが、 そこは建築業者が決まっている建築条件付きの土地であった。実家の家具店の店番も経験して家具・調度品を見る目 が養われている。さらに米国留学とご主人とのヨーロッパ生活で欧米の家や町並みを数多く見て勉強し、知識も充分 なだけに、家づくりには一家言を持っていた。自分で間取り図を書き、イメージボードまで作って自分の建てたい家の 姿を業者に伝えようとした。すったもんだがあったが、曲りなりにも自分のイメージしたマイホームは建ったが心身が へとへとになった。この苦い経験がコンセリア立上げの動機になっている。 自らを「住まいの交渉代理人」「住まいのセクレタリー」と位置付ける丸山さんは、家の新築やマンションの購入、住まいや店舗のリフォーム、模様替えまで、独自の見積りから設計、業者の選定と交渉、工事の監理まで の一切を行ってくれる。住まいづくりに悩む人にとっては心強い味方である。全国に100数十人しかいない建物などを対象にした環境色彩のカラーコーディネータ1級の資格を持つ丸山さんは、単に家を建てる、リフォームをするのではなく、環境や町並みをも視野に入れた住まいづくりをしていきたいという。(2003/2/16産経新聞) 近隣地区の専門家として覚えておきたい。 NPO高齢者支援センター(杉並区荻窪4-15-19、TEL.03-3392-7835) 介護保険から出る住宅改修補助金(20万円等)の場合に特に有効な相談相手である。全国に7,000人ほどの福祉住環境コーディネータがおり、高齢者のための住宅改修を助言・支援している。さらに建築設計家、医師、ケアマネジャー等がボランティアで高齢者や障害を持つ人、およびその家族と話し合い、考え、計画を立てる。自らが工事をすることはなく、あくまでも第三者の立場を貫く。最適の業者を推薦することはできる。メンバーは多様なので、補助金の枠を超えた相談にも乗ってくれる。 以 上 | ||||